パートナーシップの戦略的意義とスキーム類型



本稿では、現地パートナーとの協業による事業開発について、その戦略的意義およびスキーム類型について解説します。


1. 「良いパートナーと組む」とは何か?

実際に海外現地法人の経営、海外事業の立ち上げに深く関わった経営幹部が口を揃えて言う台詞があります。それは、海外進出成功の為には「良いパートナー」と組む事が正否を分ける、ということです。


ここでいう「良いパートナー」という言葉には様々な含意があり、また個別の状況に応じて変わりうるものですが、あえて定式化を試みるならば、「互いの強みを生かした相互補完的な協業を行う事ができる」、かつ、「将来の不確実性に耐えうる経営資源・コンピタンスを有する」パートナー、ということだと思います。


海外においては国内と比べ、自ずから自社の経営資源は限定的となります。この点、自社でゼロからバリューチェーンを組み立てようとすれば、膨大な時間を費消する事になりますし、特に昨今のように数年単位で市場環境が変化する時代においては現実的な方策ではありません。


したがって、「選択と集中」のセオリーに立ち、自社が持つべき機能を明確化した上で、足りないピースは現地パートナーとの協業により補う事が有力な戦略となるはずです。


一方で、この時に相手方に対する提供価値が明確になっていること、かつそれが相手方にとって代替不可能なモノである必要があります。これは上で述べた、自社が持つべき機能を明確にする、という自社リソース活用の観点と表裏の関係にあります。



市場環境、外部環境は常に変わります。コロナ禍のような未曾有の危機を誰が事前に予期し、事業計画に織り込めたでしょうか。また、フィージビリティ・スタディを実施しようと、新規性の高い事業となる程、現実には「やってみなければわからない」という余白も大きくなります。


したがって、経営の現場にはどこまでも不確実性の議論がつきまとい、結果として起きた状況の中で常に最適解を追求しなければならない、という現実的な問題があります。ゆえに、パートナーを見定める場合においても「将来の不確実性に耐えうる経営資源・コンピタンスを有する」という事が重要な要素となるのです。参入障壁や既得権といった外形的に特定可能な要素に限らず、経営陣の才覚等の定性的な評価も含めた、総合的な判断が必要となります。


2. 協業スキーム活用の戦略的利点

a) 時間を買う…自社単独でゼロベースで構築するのに相応の年月がかかる経営資源を獲得することができる

b) 人脈・地脈を得る…協業を通じて、現地の人的ネットワークへのアクセスと知見・情報の獲得が可能になる

c) 投資効率を高める…協業により生まれるシナジーにより投資効率を高める事ができる

d) 不確実性を最小化する…上記3つの効果の派生的結果として、事業化に伴う不確実性を最小化できる


いずれに重きをおいたものであるかは、各社の置かれた状況と戦略的背景により異なりますが、いずれにせよ、これらを踏まえた複合的な判断となるでしょう。



3. 協業スキームの類型

では、「良いパートナー」が仮に見つかったとして、実際にどうやって「組む」のがよいでしょうか。協業スキーム活用の類型は、大きく4つ存在します。


①資本提携(資本移動を伴う協業)

a) M&A包括的な事業協力を目的に、(株式又は事業の取得・譲渡等の形態により)一方の経営資源に対する支配権の一部又は全部を他方に移転する事による協業

b) 合弁特定の事業目的の為、パートナー企業との共同出資を伴う経営資源の拠出(資本・或いは現物出資を含む)による協業


②業務提携(資本移動を伴わない協業)

c) (狭義の)業務提携特定の事業領域・機能に限定し、パートナー同士が経営上の別個独立性を維持したまま(通常、相互かつ独占的に)経営資源を拠出する協業(技術開発・供与、生産、資材調達、物流、人材交流、販売促進等)

d) 個別契約特定の事業領域・機能に限定し、パートナー同士が経営上の別個独立性を維持したまま行う業務上・事実上の協力関係(販売委託契約、生産委託契約又はフランチャイズ契約等、通常類型的な取引形態が取られる)


資本提携の最大のメリットは、資本上の関係を通じて「企業価値の最大化」という関係を形成することで、持ち分に応じた投資家としてのコミットメントが働く事です。これは、営利企業の経営が株主の利益最大化を志向して運営されるという本質的仕組みに根ざしたものであります。


また、事業主体となる法人が法により明示的に分離されている事から、責任と意思決定プロセスの所在、会計報告、財務的リターン、知財等、各種権利義務関係の帰属を明確に定める事ができる効果もあります。


こうした理由により、特にスピード感を持って事業を推進する場合においては、現地パートナーとの資本提携によるパートナーシップが選択されているのです。


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