インドネシアの投資環境 - マクロ情報、外資規制、企業法、会計基準等 -



はじめに

インドネシアは東西に広がる何千もの火山島によって構成され、美しいジョグジャカルタの景観、幻想的な民族舞踊“ケチャ”などで日本でも知られます。2億6千万人を超える人々が住まう国として、ASEAN最大の人口を誇るのみならず、世界最大のイスラム教徒を擁する国でもあります。


その経済的なポテンシャルは注目され、近年では欧米系ベンチャーキャピタルの投資資金が活発に流入し、Gojek、tokopedia、traveloka等のユニコーン企業(一般に企業価値10億ドル以上、企業10年以内の非上場企業を差す)を擁するスタートアップ大国になりました。政府も1000 start up program という政策を掲げており、この流れを政策的に推進しています。


本稿ではそんなインドネシアの市場概況について、最新動向から外資規制に関する情報まで投資環境の全体像を解説しました。

基本情報

  • 首都:ジャカルタ

  • 通貨:ルピア (1リンギット:約0.0075円)

  • 人口2億6,703万人 (2020年)

  • 平均年齢:31歳 (2020年)

  • 人口ボーナス終了年:2044年

  • 政治体制:共和制

  • 主な宗教:仏教 (87%)

ASEAN本部を構える首都ジャカルタには、アメリカ、中国など50か国あまりのASEAN大使がジャカルタに常駐しており、日本も2011年からジャカルタにASEAN日本政府代表部を開設し、大使を常駐させています。また、東南アジアから唯一、G20に参加している国でもあります。


2億6千万人を超える人口は世界第4位の規模であり、平均年齢30歳程度と若い事も特徴です。ASEANでインドネシアに次いで2位となるベトナム(9,800億人強)の倍を遥かに上回る人口を抱えています。「多様性の中の統一」という国是が示す通り、多民族国家である事を掲げています。

マクロ情報

  • GDP総額(2018年、名目):約112兆円

  • GDP成長率(2018年、実質):5.2%

  • 貿易収支(2019年):約-3,500億円

  • 経常収支(2018年):約-3.4兆円

  • 株式市場時価総額(2020年3月):約34.4兆円

  • 2年国債利回り(2020年3月):6.24%

  • 10年国債利回り(2020年3月):7.91%

  • 法定最低賃金:約30,000円/月

  • 非製造業・マネージャーの平均賃金:約12万円/月

  • 実質賃金上昇率(2018年):4.1%

  • 大卒割合(2018年):21.2%

  • スマートフォン普及率(2018年):60%

  • 日系企業進出数(2018年):1,911社

インドネシアは国際協力銀行の「海外直接投資アンケート調査結果」の2019年調査において、ベトナム、タイに次ぎ前年同順位の4位をキープしました。若い世代に牽引される、世界第四位の人口を持つマーケットに潜在性が注目されている様です。

一方、賃金上昇率4%と高水準にあり、専ら低コストを期待した安易な進出検討には注意が必要です。


なお、2018年におけるインドネシアの一人あたり名目GPDは3,971ドルであり、これは低所得国(5,000ドル未満)の定義に当てはまります。国全体のGDPは約112兆円とASEAN最大であり、2位タイの約54兆円、3位であるシンガポールの約40兆円の2倍を越える一方で、“一人あたり”GDPでは現状、タイ(一人あたり6,992ドル)の半分程度の水準であり、今後の経済発展過程における一人あたり所得の拡大が成長の鍵となりそうです。

投資環境

1. 外資規制

インドネシアにおける投資活動に関する一般的な規制を定める法令として、「投資法」が存在します。内資・外資の別を問わず適用されるもので、外資にかかる規制は当該法の中に定義されています。

外資規制の態様としては、禁止業種を除いて外資による出資が可能ですが、「ネガティブリスト方式」で業種ごとに外資出資比率の上限を定めています。


政府が掲示する「投資ネガティブ・リスト」により業種毎の詳細な投資条件(外資出資比率等)が規定されており、外資出資比率制限は事業分野に応じて幅がある(多くの業種で上限67%あるいは49%となっている)ことから、個別にリストを確認する必要があります。

近年では、経済自由化の一環として規制緩和の対象業種を拡大しており、観光、輸送、映画館などセクターは多岐にわたります。


主たる業種別の規制比率は下記の通りです。

  • 製造業:原則、外国資本100%の出資が可能(医療機器など一部分野除く)

  • 卸売業:外資上限67%

  • 小売業:外資はデパート、スーパーマーケット、ミニマーケット(コンビニエンスストア)のみ出資可能で、別途、店舗面積の下限が定められている(以下参照)

- デパート:売り場面積が400平方メートル未満の場合は外資不可、400~2,000平方メートルの場合、外資上限67%、2,000平方メートル超の場合、外資100%可

- スーパーマーケット:売り場面積が1,200平方メートル未満の場合は外資不可、1,200平方メートル以上の場合は外資100%可

- ミニマーケット:売り場面積が400平方メートル未満の場合は外資不可。400平方メートル以上の場合は外資100%可

  • 流通業:陸上輸送は外資上限49%、海上輸送は外資上限49%、倉庫業は外資上限67%(ただし、コールドストレージは外資100%可)


外国資本の最低資本金は、製造業・非製造業の区別なく払込資本金25億ルピア以上、土地建物を除く投資額(資本金含む)の合計は100億ルピア超である事が求められます。


土地所有に関しては、「土地基本法」の定めによれば、インドネシア国籍を所有する個人にのみ認められる権利と定義されています。従って、外国人投資家は現地にて法人を設立し、事業権、使用権、建設権等を利用することにより、特定期間中にインドネシアの土地の用役を享受できます。


2. 企業法

日本の会社法にあたるのが、当国の「会社法」です。2007年に制定された比較的新しい法律となります。日本の株式会社と大きく違う点としては、設立が認可主義であることと、最低資本金額の定めがあること、株式は全て額面株式で株券(またはそれに 代わる証書)発行が義務付けられていること(非公開会社の場合)および会社の機関とし てコミサリス(Komisaris)会が存在することなどが主要なものとして挙げられます。

  • 株主総会

普通決議は出席株主の議決権総数の過半数で可決されます。

一定の重要事項に関する特別決議(減資、授権資本を超える増資、定款変更等)は、出席株主全員の議決権総数の「2/3以上」によって可決されます。また、一定の事項(日本の会社法にいう特殊決議に相当、合併、50%を超える会社資産の譲渡又は担保提供等)では「3/4以上」が要件となっています。

この点、日本における会社法における可決要件がそれぞれ、普通決議事項では過半数、特別決議事項の2/3以上(一部、「特殊」決議は3/4以上)であるのと異なります。


株主は少なくとも2名以上必要です。



  • 取締役・取締役会

1名以上によって構成されます。

決議要件は過半数が原則となっており、取締役会の決議事項、開催要件および決議要件などに関し法は規定を置いていません。左記に関連して、各取締役は個々に代表権を有しているため、社法上は仮にいずれかの取締役が取締役会の意思決定を経ずに業務執行を行った場合でも、その法的効果は有効に会社に帰属することに注意が必要です。


しかし、定款自治は許容されているため、定款に代表取締役等特定の役職を設け、かかる役職を有する 取締役にのみ会社を代表する権限を付与する旨定めることを妨げるものではなく、実務上も広く 行われています。


  • コミサリス・コミサリス会

1名以上によって構成されます。日本法における監査役・監査役会と類似の機関として、取締役会による会社経営を監督し、取締役会に経営に関する助言を行う機関ですが、一定の場合には、より直接的に会社経営に関与したり、取締役会に対してより強力な監督権限を行使することが認められている点で異なります。

なお、コミサリス会が複数のコミサリスから構成される場合、各コミサリスはコミサリス会の決議に基づいて行動することが義務付けられている点で各取締役が個別に代表権限を持つ取締役会とは性質が異なります。決議事項、開催要件および決議要件に特段の定めがない点は同様です。


3. 会計基準

インドネシアの会計制度は、インドネシア金融監督庁(OJK)・会計基準審議会(DSAK)が規定する、PSAK(Pernyataan Standar Akuntansi Keuangan)により規定されています。


積極的にIFRSへのコンバージェンスが進められており、全面的にIFRSの考え方が踏襲されていますが、IFRSの反映に時間差が発生する場合があるため注意が必要です。


4. 税制

  • 法人所得税(表面税率):25%

- 株式の40%以上を公開している上場会社の場合は5%引き下げ

- 年間売上高500億ルピアまでの場合、48億ルピアまでの課税所得に対し法人税率の2分の1

- 年間売上高48億ルピア以下の企業の場合、ファイナルタックスで毎月の売上高に対して0.5%課税

  • 日本への配当送金課税(最高税率):出資比率25%以上で10%、25%未満で15%

  • 日本への利子送金課税(最高税率):10%

  • 日本へのロイヤルティー送金課税(最高税率):10%

  • 付加価値税(標準税率):10%


最後までご覧頂き有難うございました。インドネシアの投資環境につき、理解を深めて頂く事ができたでしょうか。なお、本稿はあくまで全体像を理解頂く事に主眼を置いています。個別のご相談につきましては個別にご連絡下さい。


お問合せはこちら

東南アジア(ASEAN)の最新ビジネス情報、クロスボーダーM&Aに関する知見・論考、セミナー案内等をメールマガジンでお届けしています

  • LinkedInの社会のアイコン

公式SNSはこちら