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タイ国の裁判事例に学ぶ名義借り(ノミニー利用)のリスクと対処方法


はじめに - 名義借り(ノミニー)の現状 -

タイには、外資による事業展開を規制する法律が存在します。本来であれば適法に事業を行うべきですが、上場企業を含む日系企業のタイ進出の実情として、「名義借り」行為、すなわち外資規制を逃れるべく、“外国企業”とみなされないように登記上でタイ国籍の人・法人の名前を借り登記する、という実務事例が少なからず見受けられるのが現状です。

しかし、当該スキームは、外資規制の趣旨を潜脱するものとして違法であり、違反者に対する3年以下の懲役刑と裁判所による法人解散命令を課されるリスクを抱えています。

名義借りにかかる法的留意点につき、実際にリスクが顕在化した日本企業を対象とする裁判事例を交えて、KCP社内弁護士であるTanatに聞きました。

 

タイ国における外資規制法(Foreign Business Act B.E. 2542)とは何か

Foreign Business Act B.E. 2542(以下、「FBA」)とは、タイ国の国家安全に関わる事業、タイ国の芸術、文化、天然資源の保護もしくは、まだタイ人が外国資本と競出来ないビジネスの保護目的で本法律を定めた法律です。当該法の規定により、

日本人・日系企業を含むは本法律にいう“外国人”に該当する為、タイ国で事業を行う際に当該法規制に服する事となります。


 

“外国人”の定義

法第4条は、外国人を下記の通り定義しています。

A.タイ国籍を有していない自然人

B.タイ国内で設立・登記されていない法人

C.タイ国内で登記された以下の法人

1.上記のA又はBが50%以上の資本金・株式保有率で設立された法人

2.上記のA・B・Cが50%以上の資本金・株式保有率で設立された法人

 

規制業種

規制される業種は三つの業種に分類されます。

第1業種:特別な理由により外国企業の参入を一切禁止されるもの

例と:タイ国土地の取引業、新聞・ラジオ又はテレビ放送、農業・畜産業など


第2業種:国家安全、文化、天然資源に影響を及ぼす理由により禁止されるもの

(外資で行うには内閣承認・商務大臣が許可が必要)

第1グループ:国家安全に関わる事業

例:銃器などの軍事使用製品、国内の陸上・海上・航空運輸など

第2グループ「文化に影響を与える事業」

例:タイ国民芸術品販売(木彫、絹糸、タイ楽器など)

第3グループ「環境に影響を与える事業」

例:塩田・岩塩、鉱業、木材加工など


第3業種:タイ人の競争力が外国に比べまだ不十分であることを理由に禁止されるもの

(外資で行うには外国人事業委員会の承認、事業開発局長が許可が必要)

合計で21業種が禁じられてますが、主に例として下記の業種が挙げられます。

1.会計・法律相談

2.建築設計やエンジニアリング

3. 資本金1億バーツ以下の小売業

4.資本金1億バーツ以下の卸売業

5.広告業

6.飲食物(レストラン)

7.サービス業

 

実際に外資規制を逃れる為に名義借りし裁判になった判決を見ましょう。


裁判事例|高裁判 例 5457/2560(西暦2017年)

ローン契約(金銭消費貸借契約)による名義貸人への貸付を利用した外資規制回避スキームを通じてタイに進出した原告が、当該ローン契約に基づいて被告への貸付金の返済を求めたところ、貸付金の返済請求権は認められない、との判断がなされた事例。


原告はローン契約に基づいて、第1被告(名義貸し人)及び保証人の第2被告を訴えた。両被告は、原告から借り入れた資金を通じて被告の会社へ51%を出資する旨を合意・実行したのですが、当該契約はその買収の外資規制を回避するための取引であると判断されました。


控訴審の判決は、「タイ国人の名義で株式を保有することにより外資規制法を回避する目的で締結された契約は、民商法第150条に基づいて無効である。従って、ローン契約書は法律に違反する債務として民商法第411条の定めにより回収することは認められない」という判決を下しました。


名義人との関係が悪化した事で買戻しを迫られる等した際、名義を借りた外資企業の立場は厳しいものとなります。長らくの個人的な信頼関係があるとしても、金回りが悪くなった事による下心、誰かの入れ知恵、或いは差押さえ等により顕在化するリスクがある事は留意されておくべきだと思います。


 

対処法

対処法は、下記の3つに大きく別れます。

1.法律の定める方法によって許可を取得

2.BOI(タイ国投資委員会)より投資恩恵を取得

3.適切な現地のタイ国企業と組む


私共は現地の「3. タイ国企業と組む」方法を推奨しており、事業パートナーの探索・交渉、最適な投資・事業スキームを提案し、取引のクローズまで支援しています。名義借りスキームの解消を検討している方、又は今後進出をご検討されている方は、お気軽にお問合せください。

弊社タイ国弁護士が同席の上で対応させて頂きます。



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