マレーシアのゴム手袋産業 - コロナ危機を背景に高まる需要とビジネス機会



COVID-19の発生により、個人用防護具(PPE)の需要が高まっており、マレーシアのゴム手袋産業にとっては有望な機会

世界保健機関(WHO)の推計によると、パンデミックに対応するため、毎月約8,900万個の医療用マスク、7,600万個の診察用手袋、160万個の医療用ゴーグルが必要とされている。このような個人用防護服(PPE: Personal Protective Equipment)の需要の高まりは、マレーシアのゴム手袋産業にかつてない機会をもたらしている。

パンデミック前、世界のPPE市場は2027年までに770億米ドルになると予測されていたが、現在ではPPEへの支出が3倍になることから、2027年までに928.6億米ドルになると修正されている。医療用グローブの世界市場は、2026年には185億米ドルに達し、年平均成長率(CAGR)は11.64%になると予想される。


マレーシアはすでに世界のゴム手袋市場の65%(3,000億枚)を供給しており、2020年には527億リンギット(127億米ドル)相当の手袋の輸出を記録している。パンデミックの影響で、マレーシアの資源や伝統的な製造業に対する世界的な需要が落ち込んだ今年、同製品はマレーシアの回復力ある輸出を支える重要な原動力となった。世界有数の医療用手袋メーカーであるトップグローブ(本社マレーシア)は、2020年度の税引き後利益が417%増加(4億5900万米ドル)し、2021年にも更に30%の成長を見込んでいる。



マレーシアのゴム手袋産業は、政府から一貫した支援を受け、12の国家重点経済分野(NKEAs)の一つでもある

マレーシアのゴム手袋産業は、政府から一貫した支援を受けてきた。ゴム関連産業は経済の重要な柱とみなされており、マレーシアの12の国家重点経済分野(NKEAs)の一部にもなっている。


このような支援には、上流のゴム活動を促進するためのガス価格の補助も含まれる。天然ガスは、ゴムメーカーの営業コスト全体の10〜15%を占めるといわれる。また、連邦政府の小農セクターを監督する機関であるゴム産業小農開発局も、植え替えプログラムに多額の投資を行ってきた。マレーシア投資開発庁(MIDA)は、医療用手袋の製造に関する14のプロジェクトを承認し、30億リンギ(7億2,300万米ドル)、8,000人以上の雇用を提供しています。この投資の70%は国内の投資家によるものである。


マレーシアは世界最大のゴム生産国のひとつではあるものの、同国のゴム栽培面積は100万ヘクタール強でしかなく、インドネシア(360万ヘクタール)やタイ(370万ヘクタール)に比べると生産力では見劣りする。しかし、マレーシアのゴム手袋産業が競争力を維持できる理由は、バリューチェーンのあらゆる部分でのイノベーションにある。業界全体でロボットやオートメーションが普及しているため、国際的な安全基準を維持しつつ、高スピードで生産できる体制を構築できているのだ。


自動化以前は、月に100万枚の手袋を生産するのに10人程度の労働者が必要だったが、人工知能やビッグデータなどのイノベーションの活用により、現在は1.7人にまで減少した。同様に、1980年代には、手袋メーカーは1時間に3,000個の手袋を生産できたが、最新の生産ラインでは1時間に45,000個以上の手袋を生産できるようになった。


また、アレルギーフリーのラテックス手袋や、より薄い天然素材の手袋の開発など、最先端の技術革新をリードしているのは国内企業である。また、川中分野では、マレーシアゴム協会(MRB)が官民一体となった研究開発を進めており、これが技術の向上と強固な品質管理体制につながっている。

このような背景のもと、マレーシアの手袋メーカーは、1997年から1998年にかけてのアジア金融危機を乗り切り、現在では世界最大のサプライヤーのひとつに成長した。



外国人労働者への依存、サプライチェーン・マネジメントの課題に対処できるかが鍵

一方で、課題も存在する。オートメーション化が進んでいるにもかかわらず、この産業は依然として労働集約的であり、企業は未熟練の外国人労働者に大きく依存してきた。この点、パンデミックによる国際的な国境の閉鎖に伴い、企業は労働者の雇用が困難になっている。マレーシア自国の労働者の教育水準は高く、労働集約的な産業への就業意欲は低い。


加えて、コロナ危機により、工場や労働者寮での感染ホットスポットをきっかけとした封じ込め策により操業停止が繰り返されており、サプライチェーンへの影響が出ている。その過程で、移民労働者の劣悪な生活環境は国際的に取り上げられ、この業界における労働慣行の実施についての懸念もあがっている。これらの諸課題に適切に対処できるかが、今後の産業育成の鍵を握ると思われる。


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