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インドネシア、「クラウドキッチン」市場成長 




インドネシア、「クラウドキッチン」市場成長

東南アジアのフードデリバリー市場は、2020年は前年と比較して183%もの伸びを見せた。コロナ禍のロックダウンにより実店舗での飲食機会が減ったこともあり、アプリでフードデリバリーを頼む人が増えたのだ。コロナ禍で成長を見せたフードデリバリー産業だが、それを支える「店」のあり方に変化が見られる。東南アジア、とりわけ人口成長率が高く内需の伸びが期待されるインドネシアにおいてクラウドキッチンというキッチン貸し出しサービス事業が急速に伸びている。



クラウドキッチンのビジネスモデル

クラウドキッチンとは、ネット注文&デリバリー専門飲食店に対して調理に必要なキッチン及び調理機具を貸し出すサービスだ。飲食店側のメリットとして、主に、費用対効果の高さとスペースレンタルの柔軟性がある。クラウドキッチンは、通常レストランが建つ人通りの多い通りに面した高価な店舗立地ではなく、工業団地や空き倉庫、駐車場に設置されるため比較的安価な固定賃料で提供できる。さらに、施設内には平均10-15つの調理場があり、飲食店の要望に応じて、短期または長期のレンタルが可能となっている。したがって、飲食店は不動産賃料やキッチンインフラへの投資を抑えることができる。


また、クラウドキッチンの運営モデルはいくつか存在するが、最も一般的なものがコミッサリーキッチンだ。このモデルでは、1つの施設を複数の飲食店や個人料理人が共有で使用し、その中にある冷蔵・冷凍設備や厨房機具、清掃用具などの備品もクラウドキッチン事業者側から貸し出される。このようなクラウドキッチン事業は、Uber Eats やFood Pandaなどのオンライン飲食デリバリーサービスの急速な拡大を受けて需要拡大が見られている。



インドネシアのオンラインフードデリバリー市場

このクラウドキッチン事業を成り立たせているフードデリバリー市場を見てみると、インドネシアが東南アジアの中で最大級の規模を誇っている。シンガポールのベンチャーキャピタル・モメンタムワークス社がまとめたレポートにおいて、2020年のインドネシアのオンラインフードデリバリーサービスの流通取引総額は37億ドルで、タイ、シンガポール、マレーシア、フィリピン、ベトナム、インドネシアの6カ国の合計に占める割合は約31%で最大の割合を占めている。このインドネシアのフードデリバリー市場を牛耳っているのが、配車・配送サービス大手Grab(シンガポール資本)が手掛けるGrab foodと、同業大手Gojek(地場企業)が手掛けるGo foodだ。インドネシアのフードデリバリー市場は、Grab foodが53%、Gofoodが47%のシェアを握っており、両社による寡占が続いている。


オンラインフード市場を寡占する両者はクラウドキッチン事業への参入を開始している。2020年では、Grab Kitchenが先行して40店舗のクラウドキッチンを出店しており、それを追いかける形でGofood Kitchenが20店舗を出店した。Gofood Kitchenは、インドのクラウドキッチン事業会社Rebel foods のもつノウハウとGojekのもつ顧客データをかけ合わせて誕生した。どちらもオンデマンドデリバリーサービスに紐付いた大規模なクラウドキッチンのネットワークを使える点で優位性を保持している。



クラウドキッチン事業スタートアップ

これらの大手に対して、2つのスタートアップクラウドキッチン管理会社が頭角を現して来ている。インドネシアで急成長中のクラウドキッチン事業会社Hangryは、2021年段階では、クラウドキッチンを40店舗展開しており、そのうちの34店舗は2020年に立ち上げたものだ。同社は2021年に、店内食事型レストランを含めて120店舗に拡大する計画だ。Hangryが他社と差別化を図っている1つの要素が、自社ブランドへの注力だ。同社は、クラウドキッチンキッチン施設を飲食店に貸し出す以外に、インドネシア鶏料理(Ayam Koplo)や日本食(San Gyu)を始めとする4ブランドを抱えている。CEOのビクトール氏は「当社は自社ブランドで急速に人気を得ており、自社ブランドの潜在顧客の獲得のためキッチンリソースを割くべきだ。」と述べている。


2019年にクラウドキッチンサービスを開始したYummy Corporationはソフトバンク・ベンチャーズ・アジアが主導するシリーズBにおいて約13億円の資金調達をした。同社は、CEOのマリオ・サンタヌ氏は、「この調達資金はより多くの主要都市への進出と、データ分析を含む技術プラットフォームの開発に使う」と述べている。ジャカルタ、バンドン、メダンに70拠点以上ある衛生管理に関するHACCP認定施設を所有しており、いっそうクラウドキッチンネットワークを拡張する予定だ。サンタヌ氏は、他のクラウドキッチンと比較したYummyの強みを、キッチン設備の他に、完全に管理された施設場所やキッチン運営サービスであるとする。飲食店側は、料理の準備や配送をYummyの従業員に任せることができる。いずれの2社もそれぞれの戦略で、アプリで消費者データを得られるGrabとGojekに対抗していて、クラウドキッチン市場のシェアをどう取っていくかが注目される。


 

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