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マレーシア、デジタル化を支えるデータセンター





東南アジアでのデータセンター市場拡大

世界のデータセンターの市場規模は2022年には1兆7000億円を超えると予測されている。データセンターとは、企業がサーバーなどのIT機器を保存・管理する場所を指し、自社のIT機器を預けるサービスとデータセンター側のサーバーを借りる2つの形式が存在する。この背景には世界的なクラウドサービス普及に加え、動画・音声コンテンツの利用拡大、5Gの進展による通信量増大があり、デジタル化が世界的に進む中で市場拡大が起こっている。

 

このデータセンターの需要増加は東南アジアでも目撃されている。東南アジアのデータセンターの市場規模は、2019年から2024年にかけて年平均成長率が13%と、世界で最も成長すると大手不動コンサルティング会社が発表した。詳しくは後述するが、東南アジアでの急速なデジタル化とクラウドコンピューティング需要の高まりが背景にある。東南アジアのデータセンター市場においては、シンガポールが安定したインターネット環境、電力供給、政治的安定の観点で競争力を持っているが、近年注目されている市場がマレーシアだ。マレーシアには20以上のコロケーションデータセンターが存在し、その市場は2026年までに1.4億ドルの投資を受けると予測されている。



マレーシアのデータセンターの競争力「コストの低さ」

マレーシアが選ばれる特徴として、自然災害リスクが少なく安定したインフラが整備されていることに加え、データセンターの運用コストの低い点が挙げられる。1キロワットあたりの商業用電気料金は、シンガポールだと約0.258ドルだが、マレーシアだと約0.093ドルで2倍以上の差がある。NTTコミュニケーションズはクアラルンプールのIT特別区サイバージャヤに3つのデータセンターを構えている。地震や津波などの自然災害リスクが極めて低く、安定した公共インフラがあることに加え、周辺国と比べて電力料金や人件費が低い点を決め手としている。KDDIは現地データセンター業者と業務提携しデータセンターサービスを提供しているが、首都クアラルンプール市街地にデータセンターを設けていて、郊外に比べてより顧客のITスタッフやベンダーがアクセスしやすい好立地を獲得している。電気料金等のコストが安くすむため、このような好立地を獲得する余裕があるのではないか。



マレーシア「MyDEGITAL」国家戦略

マレーシアのデータセンター市場拡大の背景には、国家政策としてのデジタル化による経済発展戦略がある。マレーシアのムヒディン首相は2021年2月に「マレーシアをデジタル化により高所得国かつリーダー国へと進化させる」MyDIGITALイニシアチブの開始を表明した。この計画ではデジタル領域が今後の経済発展において重視されており、2025年までにデジタル経済は国のGDPの22.6%に寄与すると見込み、デジタル経済で新たに50万人の雇用機会を生むとしている。その目標達成の段階として、2023年には国際ケーブルネットワークへの接続強化のために、約440億円(1リンギネット=27.44円)が電気通信会社によって投資され、全国での5G導入に向けて今後10年間ではその10倍もの金額が投資される予定だ。2021年4月には米マイクロソフトがマレーシアに複数のデータセンターを設立すると発表し、クラウド事業強化に乗り出しているのが伺える。

 

IT関連アウトソーシング事業を行うトランスコスモスは、2017年にマレーシアのクラウド型データセンター運用を行うSoft Space Sdn Bhdと資本業務提携を結び、モバイル決済サービスの顧客管理システムの共同開発を進めている。デジタル分野での市場拡大が見込まれることから、世界的にデータセンターのM&Aをの件数が増加を続けており、マレーシアでもデータセンターは5G、IoTを始めとするデジタル経済を支える重要な領域となることが予測される。



 

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