タイ、BCGモデルでバイオ技術開発加速




タイ、BCGモデルでバイオ技術開発加速

タイのプラユット首相は、2021年1月にバイオ・循環型グリーン経済委員会(BCG=bio circular green economy)を開催した。この委員会では、タイの経済成長と社会的発展が議論された。そこで提唱されたBCGモデル(バイオ技術と循環型経済とグリーン経済の統合)の4つの重点のうち1つが、バイオエネルギー、バイオ素材、バイオ薬品だ。このバイオ技術とバイオ医療の分野は、タイでは近年成長率10%の成長分野として注目を集めている。


長期的には、持続可能な社会の実現を目指す戦略として位置づけられているが、直近ではコロナ危機への対応も相まって成長が進んだ。タイ生命科学研究所(TCELS)のCEO、Sirasak Teparkum氏は「コロナ危機によってタイの生命科学の市場は最大15%成長した」と語る。2018年創業のバイオ技術分野のスタートアップBaiya Phytopharmは、コロナワクチン関連の技術開発を行っている。特徴的なのは、ニコチンの少ないタバコの葉からコロナワクチンに必要なタンパク質を製造する技術だ。


2021年9月時点では、試作ワクチンBaiya SARS-CoV-2 Vaxは、動物での臨床実験に成功し、8月から人体での実験が開始された。2020年12月には、タイ投資委員会(BOI)によって3,940,000バーツ(約1300万円,1THB=3.293JPY)の免税が認められ、商品の70%を輸出することが計画されている。現在はBaiya Plant EGF(Human Epidermal Growth Factor)という、表皮細胞の成長とコラーゲンの生産を促し、肌に対しアンチエイジング効果を持つスキンケア商品の技術開発を進めている。



バイオ技術への外資融資

このタイのバイオ技術は実際、世界の投資家の注目を集めている。タイ政府はBOIによれば、2018年から2020年の間には、1163件のBCGに関する計画への投資依頼があり、合計で約6億ドルに匹敵する。また、タイ政府もR&Dに力を入れていて、歳出のうち研究開発への支出を2019年の1.1%から2027年には2%に2倍にする計画である。


この背景には、BOIが税制優遇措置と非税制優遇措置を通して積極的にBCG産業に投資を集めていることがある。税制優遇として、法人所得税の減税措置を提供していて、技術開発事業には最大10年間の免税措置を設けている。この優遇措置は事業・製品・サービス内容、技術水準、立地、サプライチェーン上の役割などの要素を考慮して決定される。非優遇措置として、外資100%の出資許可や土地所有の認可、経営者や専門家の労働許可証・ビザ発給などがある。



人件費高騰と付加価値産業育成

バイオ技術への投資誘致政策を始めとするタイの国家戦略は、自国が高度な技術を獲得し、付加価値の高い産業を育成することを狙いとしている。この背景には、タイの人件費高騰により危機感があるのではないか。実際、タイの最低賃金はここ数十年上昇していて、2013年には全国一律で300バーツまで引き上げられた。2020時点では、作業員の月額基本給・中央値は、タイは395ドル、インド225ドル、フィリピン246ドル、ベトナム237ドルと大きな差がある。高まる人件費・コロナ危機への対応を背景に、国家戦略としてバイオ技術を用いた高付加価値産業の育成を実現できるかが今後のタイ経済発展の焦点となる。



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