アジア最大のベンチャー資本供給国として存在感を確立する中国



急拡大する中国のアジア新興国への投資は現在、域内のプライベート・エクイティ / ベ ンチャー投資において7.5割近いシェアを有する

Preqin社によると、アジア太平洋地域を投資対象とした機関投資家のプライベートエクイティおよびベンチャーキャピタルの直近10年の累積調達額は、中国が74.3%と圧倒的なシェアを占めている。同期間、日本と韓国を合わせて10.1%という数字を見ても、まさに桁違いの水準であることが分かる。中国のファンドは、インドや東南アジアよりも自国の新興企業に重点的に投資しているが、それでもインド・ASEANへの投資件数は過去5年間で3倍以上と驚異的なスピードで増加した。


2020年には、テンセントによるインドのSwiggyへの投資、アリババによるインドネシアのTokopediaへの投資、つい先日はTokopediaとテンセントが支援するGojekとの合併合意が話題になった。これらはすべて、大きなトレンドの一部である。過去5年間を通じ、中国企業はこの地域のハイテク新興企業に数十億ドルを投じてきた。


通底するのは、中国国内での成功、確立したデジタル領域のビジネスモデルを東南アジア、インド等の国外市場で再現しようという思惑だ。決済、モビリティ、更にはソーシャルコマース。中国が日本を含む先進国に先んじたイノベーションが、資本の波に乗り他の新興アジアに押し寄せているのである。


アジアのドライパウダーは過去最高水準に達し、低金利、IPO機会に対する投資家の需要が高まっている。中国のプライベートエクイティ/ベンチャーキャピタル業界は、2021年においても旺盛な投資モメンタムを継続すると予想される。



東南アジアは昨年、4,000万人の新規ユーザーが誕生し、94%の消費者がパンデミック後もそれらのサービスを継続して利用する意向を持っている

東南アジアでは、昨年、4,000万人の新規ユーザーが誕生した。Google、Temasek、Bain & Companyの報告書によると、その3分の1以上がCOVID-19をきっかけに新しいサービスを利用するようになり、94%の消費者がパンデミック後もそれらのサービスを継続して利用する意向を持っており、これらには教育技術、食料品の配達、融資サービスなどが含まれる。東南アジア地域のインターネットサービスでは、電子商取引が依然として最大のカテゴリーで、流通総額の半分以上を占めており、食品と輸送がそれに続く。


この変化を逃さず商機とできるかが、今後の当該地域での事業展望を左右するだろう。



テック分野における外資規制は地政学的力学と無縁ではなく、インドの保守性は際立つ

アリババやテンセントなど、資本に余裕のある中国企業は投資を本格的に国外に振り分け、インドや東南アジアのハイテク新興企業は、競争力のある多くの中国企業のベンチャーキャピタルのポートフォリオとなった。例えば中国・アリババは、シンガポールに本拠を据え、ASEAN主要六カ国(シンガポール、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム)に展開するラザダ(Lazada)を2016年に買収している。


この点、インドの中国テック資本への保守性は東南アジアとの比較では際立つ。昨年は数百もの中国製アプリの禁止を行い、中国からインドへの新規投資は減少しており、20億米ドル以上の価値を持つ数百もの中国製プロダクトの参入にストップがかかった。投資先がそれぞれの経済圏で存在感を確立した後、中国資本がどのようにして継続的な成長を促し、資本流出を制限する規制の影響に耐えられるかという点も、地政学的影響に晒されやすく、残論点としてある。




中国に大幅に遅れを取った日本は域内のデジタル領域への投資を加速させ、域内における投資国としての存在感を高めることはできるかは論点

アジアのデジタル経済を発展させる上で、中国のベンチャーキャピタルの重要性はますます高まっている。


一方、直接投資国として当該地域における存在感を誇ってきた日本だが、デジタル分野においては大きく水を開けられた格好だ。日本企業および日系ファンド各社としては、いかにASEAN・インドの新興アジアのテクノロジー・セクターのネットワークに能動的にアクセスし、投資国としての存在感を確立するか。デジタル・トランスフォーメーションが経営アジェンダとして巷言される今、これは大きな論点である。



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