タイの小売市場は、CP、セントラル、TTCの三大グループが支配する寡占市場
タイの小売市場は、CP、Central Group、TTC3社による寡占支配が続いている。
セントラル・グループは、高級スーパーマーケット・チェーンのTops MarketとCentral Foodhallを所有する。また、TCCグループは、タイ・ビバレッジ(象のラベルで親しまれるビールブランド“ビア・チャーン”等を展開)を含むタイ最大のコングロマリットの一つで、量販店を中心としたハイパーマーケット「Big C」を投資先に持つ。一方、CPグループは、12,000以上の店舗を持つコンビニエンスストアチェーンのセブンイレブンと、ビジネスに特化したキャッシュアンドキャリーストアのMakroを運営する。
近年の超大型M&Aによる業界再編により、寡占化は加速の一途を辿る
2020年、英国最大のスーパーマーケットチェーンTescoが、タイの巨大ファミリーコングロマリットであるCharoen Pokphand Group(通称、“CPグループ”)に、タイとマレーシアの店舗を106億ドル(1兆円強)の売却した取引は、同年のアジアにおける最大のM&A案件となった。
以下の図は、近年(2012年~2018年)の東南アジア地域における大型M&Aの一覧だが、全8件のうち、ディール規模で上位4件までの買い手をタイ企業が占めており、圧倒的な存在感を誇る。うち2件はタイ国外案件(いずれもベトナム)であるというのも注目すべきであろう。タイの小売コングロマリットは、国内のみならず海外でも着々と基盤確立を進めているのだ。なお、日本勢では、仏大手小売カルフールのマレーシア拠点を買収したイオングループが唯一、名を連ねている。
プライベートブランドの占有率が10%と低いタイ小売市場にとって、コロナ禍は一つの契機
欧米や日本では市場の過半数を占めるプライベートブランド(メーカーのオリジナルブランド)だが、タイの消費者にはあまり受け入れられておらず、総売上高に占める割合は10%以下に留まる。背景にあるのが、圧倒的な販路を持つCP等の小売コングロマリットの存在であり、寡占化の進展はメーカーにとっては悪材料となりうる。
消費者への影響は無視できない。公正取引委員会をはじめ、行政或いは政策的に手を打つべきだという声もあるが、未だ思い切った手段は講じられていない。コロナ禍、ロックダウンを経て小売企業群が軒並み甚大な財務的影響を受ける中、大手プレーヤーへの集約とそれに伴う寡占が更に進行する可能性が高い。
一方、メーカーとしては、“ステイホーム”期間中に急拡大するEコマース販路で消費者への新たな接点を確立できれば、ビジネスモデル変革による収益性向上にも期待できるだろう。今後の動向が注目される。
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