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タイの小口物流 - Eコマースの急速な普及と変わるラストワンマイル


Eコマースの急速な普及により、小口配送への需要が高まっている

2020年初旬のコロナショックを契機とし、Eコマースが世界中で普及しました。この点でタイも例外ではありませんでした。2020年のタイにおけるE-コマースの市場規模は29億4,000万バーツ(100億円強)と言われていますが、今後更なる市場拡大が見込まれます。なお、タイは2018年時点で既にスマートフォン普及率が7割を超えており、これは7割を下回る日本の水準を超えています。


ここで、Eコマースは小売のみに関わるものではありません。Eコマースの普及・拡大の意味するところは、「小売」×「金融」×「物流」のデジタルを通じた一体的な結合であり、まさにデジタル・トランスフォーメーションの主役です。



市場は拡大基調だが、ローカル物流企業・ケリーエクスプレス他、民間プレーヤーの参入による激戦状態

この点、数十年にわたる宅配便市場を持つ日本と異なり、タイでは国営タイランド・ポスト(タイポスト)を除き、確立したポジションと物流インフラを持つ民間プレーヤーは存在しませんでした。


ケリーエクスプレス(Kerry Express)は民間発の物流企業として、Eコマース黎明期からタイポストにとって手強い競合となりました。民間ならではの洗練された若々しいイメージと、タイの消費者が小包を送る際に今までにないサービスを提供することで差別化を図ってきました。ケリー・エクスプレスは香港を拠点に高級ホテルチェーン「シャングリ・ラ」などを展開するケリー・グループの傘下企業であり、タイのほか、香港、台湾、ベトナム、カンボジア、マレーシアでも宅配事業を展開しています。


しかし、注目されるのは、2020年のタイではCOVID-19を背景にオンラインショッピングが飛躍的に成長したにもかかわらず、ケリー社の2020年本決算の売上高は4.4%減の1,405百万バーツ(約50億円)となり、株価は公開価格から大幅に下落しました。2021年5月現在、依然として株価は回復していません。なぜでしょうか。


背景にあるのは、タイ国市場の競争環境です。地場プレーヤーでは、後発ながら急拡大するFlash Express、クラウドファンディングで資金を調達したBest Express、ヤマト運輸と協業するSCG Express、Nim ExpressNim Expressまで様々です。加えて、香港資本のJ&T Express、物流版Uberと言われるオンデマンド物流サービスを展開するLALAMOVE、ソフトバンク等が出資しモビリティではタイで圧倒的シェアを誇るGrabも参入するなど、まさに激戦状態となっています。



支店拡大に伴う初期投資コスト投下と価格競争力の両立、ユーザエクスペリエンスの向上、ビジネスモデルの深化が問われる

小包輸送市場の黎明~成長過程に重要となるのは、ネットワークを張り巡らせることです。盤石な配送インフラの整備は、顧客の利便性を高めることに繋がります。


Flash ExpressやBest Expressは、自社展開ではなく、フランチャイズモデルで支店を拡大し続けています。加入者に対して輸送時に収益を分配するというもので、宅配便会社がより簡単に配送網を拡大し、体制を確保するのに役立ちます。追加の管理コストも必要ありません。


Flash Expressは創業2年目にあたる昨年、タイのコングロマリットである石油大手PTTの子会社、タイ商業銀行傘下のVCのKrungsri Finnovate等がリードしたシリーズDラウンドにおいて、2億ドル(約210億円)を調達したと発表しています。


特に、コスト削減は今後の鍵となるでしょう。フラッシュ・エクスプレスの最高経営責任者、コムサン・セー・リー氏は「先進国のE-コマースビジネスにおける送料は、小売価格の8~10%程度ですが、タイではまだ小売価格の30%近くを占めています。したがって、このようなコストが削減されれば、E-コマースがさらに発展する可能性が高い。」と述べています。今後の動向が注目されます。



 

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