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マレーシアのフィンテック - 世界のイスラム金融を主導する国家的取組み


マレーシアは8年連続で世界のイスラム金融をリード

マレーシアはイスラム経済・金融の道を切り開き続けており、Global Islamic Economy Indicator(GIEI)によるランキングでは8年連続で世界をリードしています。政府の支援とマレーシアデジタルエコノミー公社(MDEC)による経済のデジタル化拡大の継続的な推進、および経済が繁栄するためのエコシステムの積極的な構築に支えられ、近年、急速に成長しています。


マレーシアでは、1990 年代から政府主導の下、イスラム金融市場の育成に取り組んできました。証券分野においては、証券業全般を監督するマレーシア証券委員会(Security Commission)が国内イスラム金融機関によるシャリア(イスラム法)の解釈を統一的に管理するために、 シャリア諮問評議会(Shariah Advisory Council)を 1997 年に設立しています。



イスラム教では利子の授受が禁止されるが、スキームの工夫により実質的に伝統的債券と同等の経済的効果の達成が可能

イスラム教の信仰に従った債券はスクーク(Sukuk)と呼ばれ、イスラム諸国における資金調達・運用手段の重要なスキームの一つとして用いられています。コンベンショナル金融との際立った相違として、利子の授受が禁止されていることに特徴がありますが、資産や事業から生み出される収益を分配することは認められている為、イスラム金融の実務では、利子の発生を回避して、その代わりに現物資産や取引から発生する利益や手数料を投資家に支払う形で実質的にはコンベンショナル債券と同等の経済的機能を有するスキームを構築することができます。


発行体サイド(マレーシア国内の上場企業)はスクーク発行による資金調達をすることで、その株式がマレーシア証券委員会の定めるシャリア適格株式に認定されますが、この認定を 受けることによって、政府系国富ファンド (Sovereign wealth Fund, SWF)や従業員退職金積立基金 (Employ Provident Fund, EPF)から、当該株式がシャリア適格の投資対象とみなされるようになるというメリットがあります。


マレーシア国内債券市場では約6割がイスラム債が占めるなど着実な成果を記録

マレーシア国内の債券市場をみると、スクーク発行残高は2017 年 6 月末時点で 7,160 億 リンギット と債券発行残高全体の57.4%を占め、証券委員会は2018年の調査資料において130%の増加を報告しています。イスラム資本市場は8%増の2兆リンギットとなり、資本市場全体の成長率3%を上回りました。



技術・規格の両面で先導的なポジションを確立することができれば、世界のイスラム金融のプラットフォームとなりうる

トムソン・ロイター社の報告書では、世界各地のシャリアに準拠した資産が2022年までに3.8兆米ドルに達すると予測しています。非常に潜在性ある市場と言えるでしょう。


マレーシアは成熟した金融環境と安定した政治・経済基盤、透明性の高いビジネス環境など、世界のイスラム・フィンテックのハブになるための条件とエコシステムが整っています。世界的に有名な学者やシャリア学者、イスラム金融の専門家などの人材にも恵まれ、国外からもフィンテック・イスラム金融の分野の専門家が次々と集まってきています。これらの要素はすべて、イスラム金融の「ウェーブ2.0」において、マレーシアが主導権を握るための好材料です。


また、フィンテック企業が他のイスラム教徒の多い国に進出する前に、製品提供を展開するための完璧なプラットフォームも提供しています。Bank Negara Malaysia(BNM)と証券委員会は、このような拡大を促進するためにフィンテックのイノベーションを推進しています。


コロナ禍を契機とし世界的に成長が加速しているフィンテック市場において、マレーシアが技術・規格の両面で先導的な立場を確立することができれば、世界のイスラム諸国の金融をリードすることになるでしょう。今後の動向が注目されます。



 

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