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ベトナムの消費者金融 - 急拡大するP2Pレンディング市場



ベトナム人の8割は銀行口座を持っておらず、 "金融排除 (financial exclusion)"が社会の課題

経済発展が著しいベトナムでは、人口の約79%が銀行口座を持たない人たちです。銀行口座がなければ、保険やローンなどの金融サービスを受けることはほとんどできません。この現象は経済学の用語で "金融排除 (financial exclusion)"と呼ばれているものです。


P2Pレンディングはベトナムの金融情勢の需給ギャップを補完している

P2P(ピア・ツー・ピア)レンディングは、ソーシャルレンディングやクラウドレンディングとも呼ばれます。お金を借りるプロセスから中間業者を排除することに特徴があります。

担保を必要としないため、従来の実店舗型の融資機関よりも債権者にとって大きなリスクとなります。P2Pローンの金利は一般的に10〜20%で、ハイリターンの投資先を探している人にとっては魅力的なものとなっています。


ベトナムのインターネット普及率は高く、モバイルを通じたP2Pレンディングが近年は急成長

一方で、ベトナム人の多くは、銀行口座を持っていなくても、スマートフォンを持ち、インターネットを利用しています。ベトナムのインターネット普及率は67%で、域内平均の58%よりも高く、成人人口の約4分の3がスマートフォンを所有しています。P2Pローンは担保を必要としないため、インターネットに接続されたスマートフォンさえあれば融資が可能であり、当地におけるスマートフォンの普及がP2Pレンディングの重要なインフラの役割を果たしています。


ベトナムの人口は比較的若く、国民の61%以上が15歳から54歳までの間に位置しています。つまり、住宅購入や起業のためにローンを組む可能性が高い年齢層が、国の大半を占めている、ということです。


銀行口座を持たないベトナムの人々が資金を求める場合、身内に頼れない場合は、市井の業者(高利貸し)に頼らざるを得ませんでした。融資を受けられても非常に高い金利を払わされることが多かったのです。


その状況を変えるきっかけとなったのが、VayMuonやTima等のP2P融資プラットフォームの登場でした。

NextTech Group of Technopreneursの子会社であるVayMuonVayMuonは、100万ドンから1,000万ドン(43米ドルから430米ドル)程の間の金額で、短期の小額融資を求める個人を対象顧客としています。初回の融資に際しては4時間ほど待つ必要がありますが、通常は最短30分で承認されます。

わずか5人でスタートした同社は現在、ベトナムのほか、ミャンマー、カンボジアの3つのオフィスで150人以上のスタッフを雇用しています。


一方、Timaは、学生資金から住宅ローンや自動車ローンまで、あらゆる種類の消費者ローンを提供しています。同社は、借り手のソーシャルメディアアカウントのデータを分析して生成される独自の信用スコアリングシステムを保有しており、申請者の信用力を判断します。同社の評価額は現在5,000億ドン(約2,100万米ドル)で、プラットフォームには23,000以上の貸し手と210万人近くの借り手がいるとしています。


法人向け融資においても、零細・中小企業(MSME)には同様の課題

現在、ベトナムの零細・中小企業(MSME)の成長は、金融機能へのアクセス不在によって制約されており、最大で60%の企業が銀行のサービスにアクセスできない状況にあると言われます。このような状況を背景とし、多くのP2PレンダーがMSMEを対象にサービスを提供しています。


ビジネスローンの提供に重点を置いているプラットフォームであるHuyDongは、ローンを異なるグレードに分類しています。査定はグレードAからグレードFで評価され、査定に基づいて金利を設定しています。

また、Lendbiz社は、株式会社や小規模な企業(マイクロエンタープライズ)に融資を行っています。財務・非財務指標を含む100以上の基準を考慮した厳格な信用格付けシステムを採用し、併せて事業計画書の提出を求めた上で、対面での融資審査を行っています。



未成熟さゆえのリスクも存在する為、今後の法令整備が注目される

ベトナムでは、P2P融資が未規制であることが問題視されています。ベトナムのP2Pレンダーは通常、金融機関ではなく投資コンサルタント会社として登録されており、貸出利率の設定を含めて一般に適用される融資規制の枠外にあります。そのため、場合によっては年率70%にも達する金利を設定しているケースも見られます。


しかし、ベトナムではこの分野の規制に向けて少しずつ前進しています。政府は最近、P2P融資のためのパイロットプログラムの開発を発表し、その後、一連の公式ルールが策定される予定です。また、ベトナム国家銀行は規制草案を発行しており、これが可決されれば、VayMuonやTimaが提供する無担保個人ローンに新たな規制が設けられることになります。今後の動向が注目されます。



 

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